名古屋家庭裁判所豊橋支部 昭和36年(家)106号 審判 1961年8月01日
申立人 平山啓一(仮名)
事件本人 平山新一(仮名)
主文
本件申立を棄却する。
理由
申立人は第一次的申立として「事件本人平山新一を禁治産者とする」旨の審判を第二次的申立として「同人を準禁治産者とする」旨の審判を求めその理由として、
(一) 事件本人は妻はつがあるのに拘らず十三年程前から肩書住所より約一町半離れた所に妾山口久代を囲い、遊とうに耽り昨年十二月頃から梅毒より来る脳軟化症を患い本年一月より蒲郡病院に入院加療中であるが歩行も十分でないのみか病状は悪化の一途をたどるばかりで動作は兇暴性を帯びその発作も屡々あり心神喪失の状態にあるから禁治産宣告を求める。
(二) 若し精神鑑定の結果心神耗弱者と認定せらるる場合は準禁治産者として宣告ありたい。
と述べた。
よつて考えるに事件本人が心神喪失又は耗弱の常況にあると認められる証拠は一もなくむしろ家庭裁判所調査官の調査の結果によるとその然らざることが窺われる、尤も事件本人に多少浪費の傾向のあることは窺われぬでもないが家庭裁判所調査官の調査の結果によると現在では問題の山口久代とも手が切れ一応おさまつていると認められるから敢えて準禁治産宣告をなす必要があるとも思われない。(尚申立人から事件の取下書が提出されているが禁治産宣告、準禁治産宣告の申立の如き公益にも関し検察官からも申立をなし得る如き審判事件は之を取下げ得ないものと解する)
よつて主文の通り審判する。
(家事審判官 夏目仲次)